From Boston Oct.2007
Breast Cancer Awareness Month

 

10月はBreast Cancer Awareness Month 。日本でもいくつかイベントが行われていたようですが、こちらでもいろいろありました。先日スーパーで買い物をしていたらピンク色のコーナーが目につきました。何だろう? と近づいてみるとピンク色に包装されたお菓子やスナックが並んでいます。ピンクリボンがついていたので“Breast cancer 撲滅キャンペーンだ”、とすぐにわかりました。一つ購入すると売り上げのいくらかが乳がん関連のリサーチや患者ケア、患者団体等へ寄付されるなどの記載 ( “a portion of proceeds goes to XXX”, “XXX will receive a portion of a sale from every product. A minimum donation of $10,000” など) がありました。Bookstore にもピンクリボンコーナーが。ピンクの文房具やマスコット、ピンクリボンやキャッチフレーズが印刷されたTシャツ、乳がん関連の書籍などが陳列してありました。他のお店にもあるのかな〜と、10月の間はお店に入る度にピンクリボンコーナーを探してしまいました。文房具店にもありました、ありました。目立つようにピンクの風船までついています。コピー用紙がピンク色の包装でピンクリボンつき、ピンク色のフォルダーもありました。雑貨店にいたっては、キッチン雑貨がピンク色になって売り出し中。普段はあまり目につかないピンク雑貨がまとめてあります。このキャンペーンのため特別にピンク色にした商品も多いのでしょう。カメラにスープ缶、バッグなどなど。あひる(のマスコット)までピンクになっています→ (Products get pretty in pink; http://www.abcnews.go.com/Business/OnCallPlus/popup?id=3795129&contentIndex=1&page=1 )。

こうした商品、お店のピンクリボンコーナーなど目立つところに置いてもらえるので、売り上げは上々だったことでしょう。私は普段あまり買わない種類のお菓子を興味半分で購入してしまいました。味はいまひとつでしたが、いくらか寄付したことになるからちょこっとだけ良いことをした気分。でも、これ以上の無駄使い(?)はやめようと思いました。


October is National Breast Cancer Awareness Month


ブティックでもキャンペーンに参加しているお店がありました。お洒落な小物雑貨屋さんのショーウインドウがピンク色で飾り付けされ、ピンク色のペン(Breast Cancer Awareness 2007 Fall 限定版)のポスターとピンク色のバッグなどが展示してありました。ピンクが好きな人は10月にお買い物をするといいですね、いろんなピンクグッズが手に入ります。美容院でもキャンペーンを行っていました。10月の最終日曜日はカットやマッサージが半額。売り上げの数%がキャンペーンに寄付されるとか。何も知らず10月中旬にカットに行ったらお店に張り紙があったのです。チップを含めると痛い出費になるカット代が半額になるなんて、最終週まで待てばよかった〜と、とっても残念だったのですが、「でもきっと予約取るのが大変だゎ」と気を取り直しました。イソップ物語のきつねみたいですが。

公共バスもキャンペーン関連の広告を載せて走ってます。“Pink isn’t the only color associated with Breast Cancer” という文字が目の前を通り過ぎていくので、何の広告だろう?と気になっていたところ、街角で同じ広告を発見。African-American の女性向けの広告でした。「Black women は乳がんに罹患すると他の人種の女性よりも死亡率が高いのです。でもこの(ポスターの写真の)女性達は克服しました。あなたにもできます。身体のこと、そしてどんな選択があるのかを知って下さい。医師の診察を受け、検診、治療を受けましょう。」との内容。啓発・教育のための広告です。広告にあったwebsite に行ってみると、これはボストン市が立ち上げた“pink and black campaign ”でした(http://www.bphc.org/pinkblack/index2.asp )。サイトでは、このキャンペーンの概略・背景の説明に加え、検診・診察・治療を受けることを薦めており、問い合わせ先などの情報も掲載されています。


Bookstore 内のピンクリボンコーナー“What you buy makes a difference”とのキャッチコピー 小物雑貨のブティックのショーウインドウ Pink and black ”campaign の広告 雑貨店内のピンクリボンコーナー、 ピンク雑貨が並んでいる
左から 1: Bookstore内のピンクリボンコーナー “What you buy makes a difference” とのキャッチコピー
 2: 小物雑貨のブティックのショーウインドウ
 3:“Pink and black” campaign の広告
 4: 雑貨店内のピンクリボンコーナー、 ピンク雑貨が並んでいる

キャンペーンは幅広い年齢層が対象です。先日ボストンのフリーマガジンをぱらぱらと見ていたら、ミスUSA 2007 の Rachel Smith さんがピンクリボンロゴ入りのバッグを持った写真が載っていました。スポーツシューズメーカーNew Balance が行っているBreast Cancer Awareness キャンペーンのため、ボストン近郊にある本社に来たという記事でした。キャンペーンで得られた収益は Susan Komen Breast Cancer Foundation に寄付されるとのこと。Rachel さんは以下のようにコメントしてます「Breast Cancer Awareness はミスUSAとしての私の活動の中でも重要なものよ。」「若い世代にインパクトを与えたい。この疾患について知っておくことがいかに重要なことか、young girls も理解しておかないといけないわ。」

他にも関連イベントはいろいろあります。書ききれないので代表的なものを一つ。10月14日にAmerican Cancer Society 主催の“Making Strides Against Breast Cancer” が開催されました (http://www.cancer.org/docroot/PAR/PAR_2_Making_Strides_Against_Breast_Cancer.asp) 。秋晴れの気持ちのよい気候の中、ボストン(正確にはGreater Boston) 中心部を流れるCharles River 沿いを5キロほどテクテクと、時間制限もなく自分のペースでウォーキング。ヨットが浮かぶゆったりとした川沿い、対岸の景色を楽しむこともできる、とっても気持ちのいいコースです。参加費は無料ですが寄付が必要で、寄付金額の下限はない(いくらでも構わない)そうです。企業からの寄付も募っており、ホームページには寄付金トップ10が載っています。オンラインでも寄付ができるようになっています。この日はとても天気のよいウォーキング日和で、40,000人以上が参加し$3.25million(約3.6億円)の寄付金が集まったそうです。メイン会場には賛同企業のブースや記念品売りのブースなどがあり、アイリッシュダンスの余興もありました。このイベントの歴史も展示されていました。集まっていた人々は男女問わず年齢層も広くお祭りのような雰囲気で、天候に恵まれたこともあってか、爽やかな笑顔がたくさんありました。それでも、Survivorというバッジをつけている方や、Ribbon of Hope sculpture を見ると、楽しむだけのイベントではないことをしっかり認識させられます。Ribbon of Hope は乳がん克服への希望や乳がんと闘った方への追悼メッセージをピンクリボンに記して捧げるもので、一つのメッセージにつき$20必要です。


メイン会場の様子。並んでいる大きなリボンにはスポンサーの名前が書いてある。 Ribbon of Hope sculpture In-Kind Donors の名前が書いてある立て看板。食品メーカーからコーラスやダンス関連の団体、移動倉庫の会社まで、様々な領域の職種の名前がある。傍らのベンチでは参加者が一休み。
左から 1: メイン会場の様子。並んでいる大きなリボンにはスポンサーの名前が書いてある。
 2: Ribbon of Hope sculpture
 3: In-Kind Donors の名前が書いてある立て看板。食品メーカーからコーラスやダンス関連の団体、
  移動倉庫の会社まで、様々な領域の職種の名前がある。傍らのベンチでは参加者が一休み。

“Making Strides Against Breast Cancer” の広告は数ヶ月前から地下鉄駅構内や公共バス、Free Newspaper などで見かけました。ホームページには、“Making Strides Against Breast Cancer は乳がんとの闘いを助け、この病気に直面している人々に希望を与えるものです。あなたの参加が、American Cancer Society が行っている、lifesaving リサーチ予防早期発見何千人もの患者さんや家族へのサポートプログラムに役立つのです”と書かれており、参加を呼びかけています。また、“Making Strides に参加して、エクササイズ、仲間意識・連帯感(camaraderie), エンタテイメントとfoodを楽しみましょう。そして最も大切なことですが、あなたの大切な人でこの病気に罹っている人いたらその方を称えましょう。さあ一緒に、乳がんが脅威でなくなる日がくるよう前進しましょう。”とも。比較的気軽に参加できる印象です。1993 年から始まったこのイベントは今年で15年目。アメリカ各地で行われており、これまでに集まった総寄付金額は$230million(約255億円)を超え、2006 年は全国で450,000 名が参加し、$40million(約44億円)以上の寄付が集まったということです。

これらの寄付金の用途はホームページに記載があります。以下の活動資金となっています。
最先端の研究への資金提供、国内唯一の24時間cancer hotline の運営、患者・家族のquality of life 向上のためのプログラム・サービスの無料提供(国内3400 箇所以上にあるコミュニティで実施)、無料のemail マンモグラフィー受診通知サービスと、乳がんを発症した患者に乳がんを克服した元患者を紹介するプログラム(Reach to RecoveryR) の実施、乳がんの予防・病院・治療などの情報が得られるウェブサイトの運営、収入に関係なくすべての女性がマンモグラフィや治療を受けられる政策を支持する活動。なお、1972 年以降American Cancer Society がbreast cancer research に提供したグラント総額は$233.7million (約259 億円)。Tamoxifen やHerceptin の研究も含まれています。また、マンモグラフィを早期発見のためのGold standard としたのはAmerican Cancer Society なのだそうです。

ピンクリボンキャンペーン活動が盛んになる一方、ピンク商品の氾濫ぶりに懸念を示した“Think before you pink ”というキャンペーンがありました。スローガンは“Breast cancer is about women’s lives, not a marketing opportunity” 。NPO 団体のBreast Cancer Action が主催し2002 年に始まったものです。このBreast Cancer Action は草の根団体で、乳がんに関する活動の中心的存在でもあるとのことです。


think before you pink
http://www.thinkbeforeyoupink.org/Pages/AboutTheCampaign.html


Think before you pink キャンペーンの目的は、消費者に対してCause Marketing (社会貢献活動を通じて行うマーケティング、慈善活動に関連したマーケティング)に関する啓発を行うことであり、決してピンクリボンキャンペーン自体に横槍を入れているわけではありません。ピンクリボン付き商品を購入しないように促しているわけでもなく、商品を購入する前に、自分が購入することで寄付できる金額、その寄付がどの団体のどのプログラムで使用されるのか、等をしっかり確認してじっくり検討しましょう、と啓発しているものです。また、ピンクリボンキャンペーンでfundraising に参加している企業に対しても、集まった寄付金額と寄付する団体先等の詳細を明確にするよう、透明性や説明責任を求めています。さらに、乳がん撲滅を謳いながらリボンをつけて販売されている商品の中には、乳がんを引き起こす危険性があると考えられている物質に関係があるものもあり、その点についても疑問を呈しています。Breast Cancer Action では10月をBreast Cancer Industry Month と呼んでいるのだそうです。消費者に対して、自分の持っている情報を基に最善の判断を下しましょう、疑わしいと思ったら別の製品の購入を検討しましょう、と言っています。

National Breast Cancer Awareness Month (NBCAM) が始まったのは1985 年。国全体でのキャンペーンを通して早期発見の重要性を広く認識してもらうことを目指して始まりました。当時はPublic communication で不足している乳がん情報を補充するための1週間のイベントで、冊子の配布、メディアでの宣伝、マンモグラフィー普及の必要性を議会で証言、を行ったようです。立ち上げたのはAmerican Academy of Family Physicians 、AstraZeneca Healthcare Foundation 、Cancer Care, Inc.です。現在は他にAmerican Cancer Society 、National Cancer Institute 、American Society of Clinical Oncology など、主要な機関や学会がBoard of Sponsors に名を連ねる組織となっています。現在は、10月に特に力をいれてキャンペーンを行うことに加え、年間を通して患者や元患者、家族、介護者や一般社会にむけて情報提供とスクリーニングへのアクセスの提供を行っています。ホームページには、患者サービス、疾患情報、最新情報、関連情報など、様々な有益な情報が集まっています(http://www.nbcam.org/index.cfm)。

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10月といえばHalloween の季節でもあります。街の中、お店の前、家の前、いろんなところにかぼちゃがゴロゴロしていました。かぼちゃのオレンジとキャンペーンのピンク、公園や川沿いではきれいな紅葉、
それに時々Red Sox 応援団の赤色が加わって、ボストンの10月はとってもカラフルでした。