第30回 EMWA Conference参加報告
武田バイオ開発センター株式会社 メディカルサイエンス本部
メディカルライティング部長 藤井久子
European Medical Writers Association (EMWA)の第30回年会は、2010年5月11日から15日までの5日間、ポルトガルの首都リスボンで開催されました。昨年春の28回年会は新型インフルエンザの影響を受けましたが、今回はアイスランド火山噴火!経由地によっては真夜中にリスボンに到着することになった日本からの参加者もいたようです。筆者は空港で6時間待たされたあげく搭乗予定便がキャンセルとなり、空港近くのホテルで3時間ほど仮眠をとり、早朝から空港に並んでやっとリスボンにたどり着くことができました。春のEMWAは何かが起こる?!
さて、今回は受講したワークショップの1つを取り上げて、少し詳しくご紹介したいと思います。以前のコラムでも説明しましたが、EMWAcertificateを取得する場合は、ワークショップを受講し単位を取らなければなりません。そのためには、事前課題、当日のワークショップへの出席、事後課題の全てをクリアする必要があります。
今回受講したEditing and rewriting English texts by non-native speakers(advanced)の事前課題として出されたのは、9ページの英文を読み設問に答えるというものでした。題材はむずむず脚症候群の診断スケールに関するもので、Abstract、introduction、method、results及びdiscussionで構成されていました。
設問は5つ:
1) abstract中の結果部分(104ワード)をeditする。
2) methods(649ワード)の中で前置詞の使い方が間違っているものを2つあげ、正しい前置詞を答える。
3) methodsで使われている単語が適切かどうか、不適切だとするとどのような単語に置き換えるべきかを答える。
4) methodsの中で省略できる句/節を答える。
5) discussion中のカンマの使い方で正しいものと間違っているものを答える。
当日のワークショップでは、3〜4人のグループに分かれて割り振られた事前課題の文章(各グループ2ページ程度)を、約2時間かけてディスカッションしながらedit & rewriteします。ワークショップリーダーと、他のワークショップのリーダーを務めるような経験豊富なライター3名が各グループに加わり、質問やアドバイスを出してくれることでかなり深いディスカッションが行われます。その後、グループごとに修正案となぜそのような修正をしたかを発表しあい、全体でディスカッションしました。
高台から見たリスボン リスボンの路面電車 ポルトガルの銘菓 エッグタルト

 
事後課題としては大きく分けて2つの問題が出されました。
1. 老人性白内障に関する約200ワードの文書に対する設問が8つ:
1) 著者への質問が3つ書かれており、どの質問を著者にすべきかを答える。
2) カンマ、前置詞、冠詞が異なる文章が3つ示され、どれが適切かを答える。
3) 文書中の1文が示され、その文書に関する著者への質問が2つ書かれており、どちらの質問を著者にすべきかを答える。
4) 文書中の1文のedit案が3つ示され、どれが適切かを答える。
5) スペルミスの単語を答える。
6) アメリカ英語とイギリス英語でスペルが異なる単語を答える(ちなみに、EMWAではイギリス英語が使われます)。
7) 年齢の書き方で正しいのはどれかを答える。
 
(1) 76-year-old female
(2) 76-year old female
(3) 76 year old female
(4) Any of the above

8) 文法的に間違った文章が4つ示され、重大な間違いがどれかを答える。
2. Tanbone® に関する約240ワードの文書に対する設問が7つ:

1) 4つの文章で構成された段落の中から、削除できる文章はどれかを答える。
2)〜4) 文書中の1文のedit案が3つ示され、どれが適切かを答える。
5) 3つの文章からand/orを使った文章の正確な意味を示しているものを選ぶ。
6) 著者への質問が3つ書かれており、どの質問を著者にすべきかを答える。
7) 約70ワードで書かれている文章を35ワード程度に書き直す。
課題提出の後、ワークショップリーダーからそれぞれの設問の答え、点数配分、全ての受講者の点数(受講者番号で個人が特定できないようになっている)が送られてきます。さらに、別メールで自分の受講者番号が知らされ、自分は何点で全体の中でどの位のできだったのかを知ることができます。今回のワークショップ受講者15名のうち、certificate取得のため事後課題を提出したのは9名で、得点範囲は65〜85点でした。全員が単位を取得できたのかどうかは不明です。
EMWAのワークショップの魅力はAMWAにはない事後課題です。ワークショップ後に復習する機会があることは知識を確実なものにするのに役立ちます。一方、プログラムの充実度を比べるとAMWAの方が圧倒的に勝っています。EMWAAMWAのどちらに参加すべきか迷っている方は、双方のプログラム内容を十分検討した上でご自分のニーズに合わせて選ばれることをおすすめします。なお、EMWAでは、新たなワークショップを毎回複数評価しており、徐々にではありますが、プログラムの充実を図っているようです。

Social Programの一つ、
有名なポルトワインのテイスティング
第31回のConferenceは2010年11月11日〜13日、フランスのニースで、第32回は2011年5月10〜14日、ドイツのベルリンで開催されます。