制作会社/広告代理店などのメディカルライター:
エデュケーショナル/コマーシャルライティング |
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エデュケーショナル/コマーシャルライティングとは
医薬品や医療機器などに関するメディカルライティングの中で、マーケットは大きいもののライターの存在があまり知られていないのが、エデュケーショナル/コマーシャルツールのライティングです。取り扱う情報は主に疾患関連と製品関連に分かれ、対象は患者さんを含む一般の人々、医師や看護師、薬剤師などの医療従事者、製薬会社・医療機器会社(メーカー)のMR(Medical Representatives;医薬情報担当者)などさまざまです。また、表現方法はポスターやリーフレット、冊子などの‘紙媒体’から、スライドやタブレット、webサイトなどの‘電子媒体’まで多岐にわたります。 ターゲット別の多彩なコンテンツ ―医療用医薬品を中心に―
(1)一般向け
メディカルライティングで一般の人の目に触れるものといえば、雑誌やwebサイトなどに掲載される疾患や治療に関する情報、医療・ヘルスケア関連の講演会やシンポジウムなどの内容をまとめたレポート、患者さんや医療従事者へのインタビュー記事、病院やクリニックなどに設置されている小冊子やポスターなどがあります。これらは特定の製品に関する情報ではなく、疾患啓発や治療方法などに関する一般的な情報です。ドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品には製品のテレビCMなどもありますが、日本では処方箋の必要な医療用医薬品の一般向け広告、いわゆるDTC(Direct to Consumer)広告は厳しく規制されています。そのため、製品に関するライティングは、医師や薬剤師などから患者さんに手渡される服薬指導箋や服薬管理手帳など薬の適正使用を促す資材が中心になります。 (2)医療従事者向け 一方、医療従事者向けでは、直接製品に関係のない情報も扱いますが、ニーズが多いのは製品の情報提供やプロモーションのためのライティングです。そのため、疾患領域の全体像や競合品の市場動向も押さえた上で、メーカーのマーケティング戦略に沿ってストーリー構成を考える必要があります。これらは製品のライフサイクルによって制作物が異なるのも特徴です。 @承認申請時 承認取得まではプロモーション活動ができないため、この時期に制作するものは、RMP(Risk Management Plan;医薬品リスク管理計画)の観点から必要とされる適正使用に関する資材のドラフトです。医療従事者向け、患者さん向けの両方が含まれ、先述の服薬指導箋はもちろん、患者さんに治療について説明するための冊子やインフォームドコンセント用の資材、適正使用ガイドなどがあります。これらはPMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査対象となるため、早い段階から制作に取り掛かります。 A承認申請中〜上市(発売)
承認申請中は上市後の活動に向けて、製品情報概要やインタビューフォームなどの基本資材を準備します。これらはどちらかというとテクニカル・ライティングに近く、CTD(Common Technical Document)から開発の経緯や薬物動態、臨床試験の有効性や安全性の結果などを抜粋してまとめていきます。 B上市後(発売後)
コマーシャルライティングの本格稼働はここからです。医師の座談会や対談などを専門誌やwebサイトに掲載するためにまとめたいわゆる記事体広告や、メーカー主催の講演会・研究会などの記録集、市販直後調査結果や新たに論文化された研究結果を紹介した冊子や動画、学会発表の演題記録集やweb速報、文献要旨集など、プロモーションツールから学術資材までさまざまな原稿をライティングします。原稿のスタイルは、学会の記録集などのようにある程度フォーマットが決まっているものもあれば、インタビューや動画のシナリオのように構成が自由で口語体のものなど多種多様です。 (3)MR向け メーカーから医療従事者への情報提供は、MRを通して行うのが一般的です。そこでプロモーション活動の強化のために欠かせないのが、MRのための教育研修や効果的なプロモーションツールです。承認取得後、すぐにMR研修を行えるよう、疾患、自社製品、競合品などの情報をまとめた研修テキストの原稿を作るのもライターの仕事です。また、MRが医師への製品説明に用いるビジュアルエイドや、医師からの質問を想定したQ&A集などの原稿もライティングします。最近では、e-ディテーリングのためのタブレット用コンテンツも増えていることから、原稿を書く際には画面の遷移なども考えて進めることが必要です。 ライティングの際に気をつけること
これらのメディカルライティングの際に細心の注意を払わなければいけないのが、プロモーションのための行動基準を示した‘プロモーションコード’です。適切な情報提供のため、「医薬品等適正広告基準」に則った上で、医療用医薬品の場合は製薬協(日本製薬工業協会)の「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領」、医家向け医療機器の場合は医機連(日本医療機器産業連合会)の「医療機器適正広告ガイド集」などに沿って原稿を作る必要があります。原稿の書き方一つで企業倫理が問われると言っても過言ではなく、そういう意味ではライターの名前が前面に出なくても、細部まで責任を持って書き上げなければいけません。 ライティング以外の能力も必要
このジャンルに携わるメディカルライターは幅広い疾患領域に精通していることが望ましいですが、専門知識があればできる仕事ばかりではありません。ライティングのための取材やインタビュー、テープ起こしはもちろん、場合によっては企画提案や制作ディレクション、編集作業などエディターの仕事まで任されることもあり、クリエイティブな視点や柔軟な対応力も必要です。また、制作展開が速く、スケジュールがタイトなケースも多いので、質だけでなくスピードも求められます。 |