新医薬品の開発では,いわゆるグローバル開発が主流となり,日本・米国・EUでの3極同時申請もまれではなくなってきました。あわせて,規制当局の審査期間が短縮されたことによって,試験成績が適切に記載され,質の高い申請資料を作成することが求められるようにもなりました。こうした変化に伴い,製薬企業のメディカルライターの役割にも変化が生じてきています。たとえば,メディカルライターを単なる「文書作成者」と捉えるのではなく,「承認申請資料作成のプロジェクトリーダー」と捉え,社内の他部門やヘッドクオーターとの交渉も業務に含めた企業が存在します。また,質の高い文書を作成するために,Common Technical Document(CTD)の臨床部分の資料作成をすべてメディカルライターに任せる企業も増えてきました。
その一方で,実施した臨床研究の成績を論文として公表することも製薬企業の重要な責務となっています。このため,申請資料の作成だけでなく,医学論文の投稿用原稿の作成をメディカルライターの業務とする企業もみられるようになりました。このように,メディカルライターの役割は徐々に拡大しており,単なる「総括報告書やCTDの書き手」という概念ではメディカルライターを捉えられなくなっています。同時に,多様な役割を果たすメディカルライターの経験は社内でも高く評価され,メディカルライターから異動して,臨床開発の重要な役割を担う方も登場する時代となっています。
今回のシンポジウムでは製薬企業のメディカルライターに焦点をおき,その役割がどのように変化してきたか,そうした変化に伴ってメディカルライターにはどのようなスキル・知識が求められるのか,さらにメディカルライターの価値は何かを考えたいと思います。なお,パネルディスカッションでは参加者にも討論にご参加いただきたく,ご質問などがございましたら,積極的にご発言ください。
(ノバルティスファーマ株式会社,JMCA評議員 安藤 聡美
アラメディック株式会社,JMCA評議員 林 健一)