これまで,本講座では「抄録の書き方」「緒言の書き方」をテーマとして,講義と演習を実施してきました。今回は「方法Methodsの書き方」をテーマとして同様の講座を開催いたします。一般に,「方法」は医学論文の中で最も書きやすいセクションと考えられていますが,その一方で,方法が適切に記載されていない論文を目にすることは決して少なくありません。
研究者が論文を書く際には,結果と考察に重点を置きがちです。しかし,その研究がどのようなデザインで実施されたのかを読者が理解できなければ,考察や結論の妥当性を評価することはできません。著者の考察や結論を読者が受け入れるかどうかは,方法が適切に記載されているかどうかに依存するのです。
こうした観点から,Consolidated Standards of Reporting Trials(CONSORT)では,ランダム化比較試験の成績を報告する際に記載すべき情報を25項目のチェックリストとしてまとめ,論文を批判的に(客観的に)評価できるようにしました。本講座では,あるランダム化比較試験の成績を報告した抄録を読み,記載されている情報に不足がないかどうかを分析するという演習を最初に実施します。続いて,ばらつきとバイアスの違い,方法に関するCONSORTのチェックリストの内容を講師が解説した後,このチェックリストを用いた演習を実施し,方法の記載が適切かどうかを分析していただきます。さらに,記載に不備がある場合には,その不備が結果の解釈にどのような影響を及ぼすのかも分析します。これらの講義と演習によって,方法の書き方を身につけていただくのが本講座の目的です。
なお,従来からの継続性を考えて「上級講座」という名称を用いましたが,今回は臨床試験を実施する際に注意すべきバイアスを基礎から解説します。したがって,医学論文を執筆した経験が豊富な方だけでなく,将来医学論文を執筆する予定の方,あるいは臨床試験の計画立案に関与する方も遠慮なくご参加ください。
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