「医師主導」研究に対する製薬企業の関わりが大きな社会問題となり,一般誌でも連日のように報道される事態となっている。
1990年ころまでは,医師研究者への文献検索・統計解析サービスは製薬企業営業部門の重要な仕事であった。(そのため日本のアカデミアには統計家がほとんど存在しなかった。)1991年の改正独占禁止法の施行,その具体的な業界版の製薬協公正競争規約が作成され,医療関係者に対して,無償でサービスを提供することを禁止した不当景品類防止法が発効し,上記のようなサービスは影をひそめたはずであったが,実態はそうではないことが改めて明らかになった訳である。「パンドラの箱が空いた。」今回の一連の「不祥事」を報じるあるサイトの表現である。
明確な契約のもと,データの中立性・透明性を確保した真の意味での「医師主導」臨床試験を製薬企業がどう支援するか,どこまで支援できるのか,多くの製薬企業が迷っている状況である。メディカルアフェアー部門がその役割を担うことになろうが,組織の位置づけ,人材の確保と教育,契約と実際の支援のあり方に関し,課題は山積している。今回のシンポジウムでは,研究論文のパブリケーションマネジメントを含め,メディカルアフェアー部門のあり方について,生産的・前向きで本音の議論を行いたい。
(大橋 靖雄,中央大学理工学部人間総合理工学科 教授・JMCA理事長)