保健医療に関する情報提供のあり方が問われている。一連の降圧薬臨床試験不祥事による規制強化の影響もあるが,こと医薬品に関しては,プロモーション対象が医師から国民全体に移行する流れがある。一方,本年4月1日から,消費者庁への届出制度として,農水産物を含む食品に関する機能性評価が可能となる。一般国民はこの機能性メッセージを理解できるのであろうか?情報提供に正確性・中立性・透明性が求められる中,送り手には更にいっそうの情報解釈力とモラルが求められている。英語圏ではメディアドクターというマスメディア監視のシステムも存在する。
本講演会では,一般国民が保健医療情報の直接の受け手となる場合の諸問題について議論したい。如何にしてミスコミュニケーションを減らすか,そのために望まれるものは何か,具体的には,発信者の問題・発信される情報自体の問題・受け手のレセプターレベルの問題・仲介するコミュニケータの問題・社会全体としてミスコミュニケーションを防ぐ機構の問題などが主なテーマとなろう。
(中央大学理工学部教授/東京大学名誉教授 JMCA理事長 大橋 靖雄)