医学雑誌に論文を投稿する際,抄録には十分な注意を払うべきです。なぜならば,数多くの論文が投稿される雑誌の場合,編集者が投稿された論文の全文を読むことは困難で,抄録を読んだだけで査読に回すかどうかを判断することがあるためです。学会での発表も同様で,ほとんどの場合は抄録だけで演題の採否が決まることとなります。また,読者の立場から考えても,抄録だけから研究の意義を判断できるよう,批判的吟味に必要な情報を抄録に盛り込むことが要求されています。こうした背景から,CONSORT(Consolidated Standards of Reporting Trials)グループは,抄録に必要な情報のチェックリストを作成し,あわせてチェックリストに対する解説や抄録の例示も公表しています。
一方,ほとんどの場合,抄録には単語数や文字数の制限が課せられます。このことは自由な抄録の作成を困難にする一方で,「要求される情報を盛り込めば,それだけで規定の文字数や単語数に達してしまう」という状況を生み出すことにもなっています。要するに,一度ポイントを押さえると抄録は作りやすくなり,必要な情報を盛り込んだうえで,投稿誌に応じてスタイルを改訂すれば,抄録がほぼ完成することとなります。
今回の講座では,参加者を6〜7名のグループに分けたうえで,ある英文の医学論文をその場で読んでいただき,抄録を作成していただきます。そして,論文のどこを読めば抄録が作れるのかを理解していただこうと思います。「2時間で英語の論文を読んで抄録を作成するなんて無茶だ」とお感じになるかもしれませんが,ポイントを押さえていただくのが本講義の目的ですので,意図的に演習の時間は短くしています。論文全部を読まなくても抄録は作れることをご理解いただくための演習とお考えください(注:作成する抄録は日本語で結構です。また,辞書・電子辞書は持ち込んでかまいません)。実際に医学論文を作成する方,あるいは企業で治験の要約資料を作成する方などのご参加をお待ちいたします。(アラメディック株式会社 代表取締役,JMCA評議員 林 健一)