メディアドクターとは,医学記事を書く際に,その品質の最低水準を守ろうとする活動である。医療の専門家とメディア関係者とがチームを組んで,社会に発信された医学記事を臨床疫学などの視点から“採点”し,その結果をインターネット上に公表するというユニークな活動で,オーストラリアに始まり,現在ではカナダ,米国でも実施されている。
評価のねらいは,記事のABC (Accuracy: 正確さ,Balance: バランス,Completeness: 完全さ) を高めることにある。具体的に現在海外で実施されているメディアドクターでは,次の10項目が評価の指標として使用されている。
①治療の新規性,②治療アクセス,③代替性,④あおり(病気作り),⑤エビデンスの質,⑥治療効果の定量化,⑦治療の弊害,⑧治療コスト,⑨情報源の独立性,⑩プレスリリース依存
今回のサロンでは,まず石川氏よりオーストラリアで始まったメディアドクターが他の国へ広がった経緯や,メディアドクターの対象および評価方法について概説し,日本でもメディアドクターの指標を用いて医学記事の質を評価する試みが始まっていることを紹介してもらう。
次に北澤氏より,日本と英国におけるインターネットのニュースサイトで病気の治療および予防に関する記事を収録し,メディアドクターの指標を用いて評価した解析結果を報告する。
その後,実際に具体的な記事を用いた演習を行い,グループ毎の受講者の解析結果を比較検討してみたい。