生命医科学研究においては、裁判沙汰となった臨床試験に限らず、基礎実験についても不正行為が相次ぎ、関係者の処分やその背景の分析と防止対策の必要性が議論されています。これは日本に限ったことではありません。海外においても「医学生物学論文の70%以上が再現できない!」(Nature 2013年8月1日号)として、基礎実験の信頼性の確保の必要性が議論され、「統計学的に適切な動物実験計画を立案すべし」(Nature 2015年4月16日号)とされ、サンプルサイズの設定根拠記載などを求める論文執筆ガイドラインARRIVE(
http://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.1000412)が発表されています。臨床試験においては品質保証のためにGCPが厳しく遵守され、CONSORTなど論文執筆ガイドラインも定着していますが、(新薬・新医療機器開発のためのGLP準拠の実験を除く)研究者主導で行われる基礎実験においては、品質保証の仕組みは世界的にもまだまだ不十分です。
このような危機感から、AMEDは基礎実験を対象として「研究データの質向上の指導者育成事業」を開始し、教育カリキュラムの整備とその実践を数年がかりで行う予定です。
本セミナーでは、JMCAとしてはじめて本格的に動物実験(基礎実験)をとりあげます。上記のARRIVEガイドラインを紹介し、ある意味では臨床試験より難しい動物実験(基礎実験)のデザインと統計解析を議論し、上記AMEDの事業の一環として視察が行われたエジンバラのDCC(Digital Curation Center)の活動と世界的に起こりつつあるopen science化(データ標準化と管理・公開がキーとなります)の動きを紹介します。
今回のセミナーはメディカルライターの方々はもちろんですが、むしろ実際に基礎実験に携わっておられる、とくに指導する立場におられる方々に参加いただきたいセミナーです。関係する方々に広く周知いただきたくお願い申し上げますと同時に奮ってご参加ください。
JMCA理事長 大橋靖雄