講演会の要旨:
最近の主な医学系学会では、論文作成・投稿に関するプログラムが組み込まれることも多く、研究者がICMJE(医学雑誌編集者国際委員会)など出版倫理のガイドラインを知る機会も増えてきています。このような中、2020年前半、主要な臨床医学雑誌に掲載されたCOVID-19関連の2つの論文が、研究不正の疑いで立て続けに撤回されるという残念な事態が起こりました。2015年に出された厚労省の指針1)によれば、Publicationに関連した研究不正とは、いわゆる捏造・改ざん・盗用だけでなく、二重投稿や不適切なオーサーシップなどの不適切行為もこれに準じると述べられています。
企業主導の臨床研究のPublicationでは、GPP32)などの出版倫理を遵守するのは勿論のこと、患者さんも潜在的な読者として認識したうえで、臨床研究で得られた知見をタイムリーに公表することが重要です。そのため、日本でも製薬企業や出版会社でPublication managementの専門部署・人を配置するようになってきました。しかし、その役割に対する著者らの理解は未だ十分とは言えません。そのため、Publication managerが著者とのコミュニケーションで困難を感じる場面も多く、論文化支援が円滑に進まないといった問題もみられます。また、Publication managerが実践で経験を積み、そこでの課題を共有・議論する機会は極めて少ないという、人材育成にかかわる問題もあります。
このようなことから、今回、Publication managementに関連した最初のシンポジウムとして、まずは医学論文投稿支援の過程でどのような問題が起き、どのような対応がされているのかの現状を把握することを目的に、Publication management関連の仕事に従事する方をお招きし、事例を共有していただくことにしました。また、Publication managerが果たすべき役割やこの専門分野の啓発活動についてもご発表いただきます。
あわせて、近く公開予定のPublication management関連のJMCAのホームページ上のサイトについてもご紹介する予定です。たくさんの方々のご参加を心よりお待ちしております。
司会:日本メディカルライター協会 理事長 大橋 靖雄
中央大学理工学部 人間総合理工学科 教授,東京大学名誉教授
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