21世紀の現在、疾病負担を減らすために重要なのは、人々の喫煙、飲酒、身体活動、食生活の行動変容です。感染症に対しては、予防接種と感染予防行動の促進も求められます。疾病の進行を抑制するための受診や服薬などの行動の促進も重要です。健康行動、行動変容を促すという視点は、保健医療のライティングでも求められています。
行動変容を促すコミュニケーション(ライティングを含む)の効果には3つの要因があります。コミュニケーションの「送り手の要因」、「受け手の要因」、そして「メッセージの要因」です。この講座は「メッセージ要因」を扱います。メッセージ要因とは、ライティングの書き手が「どのような内容を、どのように伝えるか」です。
患者さんの行動変容をうながすライティングには4つのハードルがあります。@患者さんがその情報に興味を持ち、Aその内容や重要性を理解し、B患者さんの考え方が変わり、C記憶に残る、という4つです。これまでの専門家から患者・市民に向けたコミュニケーションは、「正しい知識を提供して望ましい行動を促す」という「教えるコミュニケーション」に偏ってきました。しかし、4つのハードルを越えるには、知識を教えるコミュニケーションだけでは足りません。患者さんに「感じてもらうコミュニケーション」も重要です。
この講座では、行動変容のためのコミュニケーションに関する近年の学術的知見をふまえ、4つのハードルを越えて患者さんの行動変容をうながすライティングで重要な10原則を解説します。それぞれの原則について、学術的な背景を解説し、活用例を紹介します。この講座は、行動変容のための患者向けパンフレットやウェブサイトのライティングに役立つ実践的な内容です。
講師は、『実践 行動変容のためのヘルスコミュニケーション』(大修館書店)の著者で、これまで5000人を超える保健医療従事者を対象に、患者・市民向け情報作成の研修を行ってきました。東京大学や帝京大学の公衆衛生大学院でも同じテーマで講義を行っています。
ぜひこの機会にご参加ください。
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